「肥満が発展途上国を襲う」 発展途上国に暮らす数億人の食と健康をめぐる状況は,この20年で激変した。ほとんどの途上国では,飢餓に代わって肥満が健康への脅威になりつつある。とくにメキシコやブラジル,エジプト,中国などでは体重過多および肥満の人たちの割合が急増している。メキシコでは成人の69%,ブラジルでは59%が体重過多まはた肥満だ。メキシコこの問題が顕在化して,南アフリカ共和国などでは,成人の半数以上が「太り気味(体重過多)」(体格指数BMIが25以上)または「肥満」(BMIが30以上)だ。世界規模でみると,13億人以上が体重過多であるのに対して,飢餓に苦しむ低体重者は約8億人にとどまる。
いまや肥満人口の割合は途上国でも米国のような豊かな国でもほとんど変わらない。しかも,栄養不足から栄養過多への移行(栄養転換)は100年足らずで起こっている。その最大の原因は,テレビや乗り物の普及などによって身体を動かすことの少ない暮らしへと変化したことと,カロリーの高い甘味料や植物油,動物性食品(肉類,魚,卵,乳製品)が安価で手に入るようになったことだ。